運動の結果分かったこと

1999年に「北総線の運賃値下げを実現する会」が結成されて以来の運動でわかったことは、「京成・北総は、いくら利益が上がっても北総線の運賃大幅値下げを実施する気がない」ということです。北総線の営業成績は他社と比較しても飛びぬけて優良経営です。それも当然です。代替の鉄道がないのを良いことに、他社線に比し、2~3倍もの運賃を取っているのですから・・・・。北総線を建設するのに要した多額の「建設費(現在も800億円もの残債を抱えている)を償還し終わるまでは、値下げなどとんでもない」との主張ですから、この先半世紀にもわたって高運賃を維持し続けるという立場を取っています。

現運賃体系の特徴は、近距離激高・遠距離逓増となっており、沿線住民には高い料金を払わせるが、空港利用者には比較的安い料金(他社線やバスとの競争に勝てる料金)設定としていることです。このことは公共交通機関としての鉄道の社会的役割を忘れた、自社の利益のみを追求する、およそ鉄道経営にあってはならない「利益至上主義」であると批判されても仕方のないことです。

2010年7月17日から「京成のスカイライナーとアクセス特急」が、北総線の線路を使って営業を開始しました。北総線上を走る電車の数が、それまでに比較し1.9倍以上も増える事業計画ですから、私たちが「運賃も大幅に安くなる」と思ったのは、ごく自然のことでした。ところが実際にはまったく下がりませんでした。(別枠で沿線自治体の助成による5%弱の値下げが実施されています)

国交省の運賃認可後に京成が公にした北総等への線路使用料の内容をみて、運動に携わってきた者は、われとわが目を疑いました。なんと「線路使用料」という項目はあるものの、北総に支払われる実際の線路使用料といえるものはゼロだったのです。京成いわく「北総の経営に影響を与えない(北総の利益は減りもしないが増えもしないよう調整する)」「北総の乗客が京成のアクセス特急に乗り換えた乗客の運賃は当然京成の収入となる。しかしこれでは北総の経営が成り立たなくなるから、線路使用料という名目で返還する」というのです。つまり、「事業計画よりは減らしてはいるものの北総線の上を、1.6倍以上もの京成電車を走らせるのに、一円も払わないで済ませる」ということなのです。

どうしてこんな不合理、不正義、差別が許されるのでしょうか? 私たちの質問に国交省は「民間会社と民間会社の契約であり、法に触れない限り介入できない」とこたえ、京成は「独立した会社同士の契約であり、問題ありません」というのです。
通常他社線上を電車が走るときは「相互乗り入れ方式(線路を保有している会社が運行に責任を持ち、運賃もその会社のものとなる方式)」をとっています(つまり、線路を保有する会社は、自社に運賃収入が入らない他社の運行など承認しないのです)。ところが、京成と北総の場合、北総鉄道が京成高砂~印旛日本医大間の運行免許を持っているのに、親会社の京成電鉄がH14年に、「京成高砂から成田空港までの運行許可を申請し許可された」のです。北総線区間のように二重免許という例はきわめて例外的です。北総線上にも運行許可を得た京成は、そこを走る「自社の車両に乗った乗客の運賃は京成のものだ」とする法的根拠となっているのです。後は北総鉄道との契約によってどのように負担するかが決まるわけです。(H14年の許可時から、現在の分配が関係者の間で、約束されていたということでしょう。知らなかったのは私たち沿線住民だけだったのです。ここには国交省・千葉県・UR・京成との間での天下りと人事交流、住民を無視した暗黙の了解があったとみるべきでしょう。)

では、北総鉄道はなぜ応分の負担を京成電鉄に求めないのでしょうか。それは、北総鉄道という会社が、実質京成の会社だからです。株式の過半数を京成グループで保有している上、北総の役員は京成の関係者ばかりなのです。しかも、京成の代表権を持った人が、ついこの間までは北総の社長も含め3名もおられたのです。これでは北総鉄道の経営方針は、京成の都合のいいように決まってしまうのは当たり前です。

以上のことからいくつかの重大な問題点が浮かび上がってきました。

1.こんな不公正な運賃は、鉄道事業法違反ではないか
  したがって、国交省が認可した運賃は無効ではないか
    ① 沿線住民と空港利用者との極端な運賃の差は、不公正としか言いようがない
    ② 通学定期券が、25%値下げしても、京成本線の3倍もの高額となっている
    ③ 京成本線に乗った場合と成田空港線に乗った場合の運賃の差は、公平とはいえない
    ④ 北総線(5%弱割引運賃)と成田空港線の運賃が異なるのは、「同一路線で運賃が異なる」という不公正ではないか/

2.不公正な線路使用料の認可は、鉄道事業法違反ではないか

3.北総鉄道の運賃体系そのものが極端な不公正・差別運賃であり、鉄道事業法違反ではないか
  (この場合、上限運賃の認可が1998年であり、「認可後6ヶ月以内の異議申し立て」という期間を過ぎているという問題もある)

4.北総と京成の関係が、親子関係にあり、今回の両社の契約が北総の株主に不利益を与えている、会社法違反ではないか



運賃値下げ運動の進むべき道

 成田空港線が開通したことにより、北総線の運賃値下げ運動もひとつの転機を迎えているといわざるを得ないでしょう。
住民運動という意味ではこれまでどおり、多くの人に知らせていく活動を続けると共に、県議会・国会での問題提起、さらには国交省・総務省(消費者庁)への働きかけ、マスコミへの働きかけ等により運賃問題を、北総沿線の問題から、全国的ニュースとなるように広めていくことが考えられます。

しかし、「国交省が認可しているんだから・・・・」「民間会社同士の契約だから・・・」ということになると声を大きくしていくだけでは、打開しきれない権力の壁を感じます。でも消費者の立場を守るという法的裏付けも強まっているという追い風もあることでもあり、もう一つの権力=司法の判断を仰ぐ、という道も選択されて良いのではないかと考えられます。
これまで開かれてきた集会では、「裁判に訴える気はないのか」との声もつよまり、ついに「北総線値下げ裁判の会」を立ち上げることになりました。それ以後、短時日のうちに多くの原告候補が名乗りをあげ、支援の資金も予想を超えるスピードで集められていることなど、取り組み始めた私たちの理解をはるかに超えて、沿線住民には大きな怒りが渦巻いていることが実感できます。

司法での争いは、簡単ではありません。強力な弁護団がついたとは言うものの、相手は国です。最高の弁護団が相手となるわけですから、手強いのは言うまでもありません。弁護団には充分に練った内容で提訴していただく予定です。あとは、世論をどれだけ盛り上げていけるかどうかにかかっているといえます。そのためにも軍資金がまだまだ不足しています。
せっかく住み着いた千葉ニュータウンです。運賃が高すぎて転居するなどという悲しいことは一日も早く、やめにしたいものです。
多くの皆さんと共に、運賃引き下げを実施したいものです。